2017年8月2日水曜日

アースクェイク虎 第1巻振り返り

ACT.プロローグ「アースクェイク」

作者からのメッセージ

作者のまとらまじゅつです。
 この度は熊本地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
 
 この作品は被災者が元気を取り戻して貰えることと、地震で被害に遭われた地域の1日でも早い復興を祈って作りました。


 日本各地の峠が廃道になり、免許が16歳から取れるようになった世界――。
 あの伝説の誕生から1年が経過していた。

 2016年4月16日、熊本県内に震度7の揺れが県内を壊し、うちらの日常ば一瞬で崩壊した。

 城の石垣や神社の社ば倒れ
 
 県の風景ばまるで世界の終末のようだった。
 地震で100人以上の人たちが犠牲になった。

 生き残った人も苦しく、家を失った人もいた。

 うちもその1人だったばい……。

 被災したうちばこの地震がキッカケで何かの能力に目覚め、後にひょんなこつから手に入れた車や仲間たちと共に地元で激しい戦いを繰り広げて……。
 
 地元最速の走り屋となっていくのだった。


 深夜2時の体育館の空から激しいプロペラの音が聞こえてくる。

 耳を塞ぎたくなるような音だったばい。

「う~ん。
 うるさいなぁ」

 こんな嫌な音を耳で触れたうちば目が覚めてしまった。

「これで何度目ばい……」

 この体育館にばうちをばじめ、地震で家を無くした方々が暮らしている。
 もう、眠れんたい。

 仕方なく、狸寝入りで朝を待った。


 朝8時、体育館から出ると炊き出しのご飯を手に入れに行ぎゃんとしたけど、報道陣のクルマが邪魔で手に入れるこつができなかった。

 体育館前の段差に座ると、持っていた朝鮮飴に米と味噌を掛けて食べる。
 それらば父ちゃんから「いつかば餓死するから、それに備えるこつ」って教えられたから、携帯しているからな。

 食べ終えて体育館の中に入ろうとすると、報道陣に捕まってしまった。
 それを断固拒否した。

 しかし報道陣ばとてもしつこく、断っても、断っても、取材をしようとしてくる。

「震災で家を無くしたんですよね」

「取材ば後にしてくださーい!」

 ほんとそれ。
 今ば取材を受けたい気分じゃあないのに。

「取材させてください!
 テレビで報道しますから!
 取材しなければ帰れませんから!!!」

「もういいだけん!」
 
 まるで匂いに釣られるようについてくる。
 もうどっか行けばよか!

 その時、うちの前に黒髪長髪な長身女性が現れた。
 救世主がやってきたばい!

「被災者に対してそのような態度ばやめてください。
 そっとさせたほうがいいです」
 
 救世主ばあいつらに対して「被災者へ迷惑を掛けていることに気づいていない」と説教を始めると、説教されたあいつらば退散していった。

ACT.1「エクリプス」

 ある女性の手助けでマスコミの魔の手から離れるこつができて、ホッとした。

「助けてくれて、だんだんです!」

「いえいえです。
 困っている人を助けるのが私の役目ですから」

「実ばこれが初めてではないんです。
 震災直後から何度も嫌がらせを受けたんです」

 この人、命の恩人ばい・・・・・・。

 次にこの人の事について聞いてみた。

「あなた、誰でしょうか?」

「私はサラマンダー財団代表の竜宮沙羅子と申します。
 現在サラマンダー丸にて支援をやっております」

 沙羅さんの言った言葉に気になってしまい

「うち、加藤虎美と申します。
 サラマンダー丸という所ってなんでしょうか?
 お城でしょうか?
 是非行ってみたいだけん!!?」

 こんなこつを言ってしまった。

 軽いノリばってん応じてくれるだろうか

 あと、朝ご飯ば朝鮮飴しか食べてなかなので空腹が恐ろしいばい。

「はい、行きたいなら行かせますわ」

「だんだんです!
 美味しいもんありますね?
 朝、マスコミに邪魔されたのでもうハラペコです」

「ありますわ。
 サラマンダー財団は被災者に食べ物を提供しておりますから」
 
 よっしゃ! 
 これで助かるばい!

「私の車に乗りましょう」

 沙羅さんに連れられて、それが止まっている場所へ向かった。
 
 紗羅さんのクルマば三菱ランサーエボリューションファイナルエディションばってん

「すごい車たい……」

 威圧感を出す巨大な前後のウイングとボディキットで武装された外観ば暴走族も逃げ出しそうな迫力であり、もばや車とば思えなか。
 
 そんあ車にうちば乗り込んだ。

「さぁ、行きましょうか」

 紗羅さんがエンジンキーを入れて車を目覚めさせる。
 彼女のハンドルを握るエボファイナルばボンネットから2つのターボの音とスーパーチャージャーのコンプレッサー音をうるさく発生させながら、目的地へ向かっていった。

 沙羅さんば運転しながら、うちのこつを見ながらこんな風に考えた。

(この人、オーラがありますわね。
 緑とオレンジのオーラが見えますわ)

 うちのオーラってどぎゃん意味ばい……。
 もしかして、走り屋としての才能があるんたい?


 出発して10分。
 うちを乗せた沙羅さんのエボファイナルば目的地の青くて巨大なテントことサラマンダー丸へ着いた。

「到着ですわ」

「すごか建物ばい」
 
 そこばまるでイベントを開催するようなテントに近か、と言うより……それより迫力ある建物だった。
 この建物ば災害の支援時に建てられているらしい。
 
 その中にうちば入っていく。

 中に入ると、1人の青髪サイドテールの女性が迎えてくれた。

「お待ちしておりました、代表。
 あと、その黒い髪の人は誰でしょうか?」

「その人は加藤虎美という者ですよ、奈亜河」

「初めまして。
 加藤虎美、17歳、おいおいだけん!!!
 うちばサラマンダー丸ば初めてけん色々教えて頂けたら結構です!!」

「私は毒蝮奈亜河、サラマンダー財団の副代表を務めている。
 分からないことがあれば、代表と共に聞くからな」

「初めてサラマンダー丸に来たなら、ここの設備を教えましょう」

 沙羅さんと奈亜河さんがサラマンダー丸の案内を始める。

「これが宿泊用テント。
 それぞれ3つ用意され、被災した人を住ませている」

「これが代表本部テント。
 私たちの本拠地ですわ」

「なるほど、なるほど」

 テントの中にテントがたくさん並んでいた。
 どれも覚えておくばい。
 
 大きな代表本部テントの正面にあるテントに注目した。

「このテントって……
 なんか匂いがしますけど」

「これは食堂用のテントですわ。
 全国各地から調達した食材を被災者に提供しております」

「おおう、食堂ですか!
 うちも食べてもよかですね?」

「どうぞ」
 
 うちのお腹がついに助かる!
 朝ご飯ば朝鮮飴しか食べていないうちばここに入って腹ごしらえをした。

「ごちそうさまでした」
 
 食べるとそのテントを出る。
 食堂テントから左にある2台の車に目に留まる。

「あの車ばなんでしょう」

「あのエスティマハイブリッドは電力供給用の車です」

「被災者に電気を提供している」
 
 エスティマハイブリッドってある番組で5年前に起きた東北の地震で大活躍したと聞いたぎゃん。
 ここでも活躍し、車ば被災者の電気になるど。

 サラマンダー丸の中にある車ばこれらのクルマだけでばなか。
 2台のエスティマから北の方向、本部テントからすぐ東の方向にあるテントにある車を見る。

 ライトを点けていないのに開いているリトラクタブルヘッドライトのマスクと流星的なラインが特徴的な黒い初代三菱エクリプス
 このエクリプスば派手に武装されたエアロパーツに、サイドに流れるバイナル、金色に光るホイールが付けられ、ドアば上に開くガルウイング仕様だった。

 かっこよか……かっこよか……。
 うちはレースゲームに対する憧れからクルマに興味を持っていたけど、今までにない感情が心に現れた。

 その車に対してうちの心にアドレリンが駆け抜け、走ってあのテントへ向かった。

「この車、うちを呼ぶような感じがしとるばい」

 後から沙羅さんと奈亜河さんが来る。

「このエクリプスですか?」

「これは中古車で売られていたが、震災で被災して廃車になっていたのをサラマンダー財団と長野のグリーン・グローヴの共同で修復したクルマだ」

 その車を見たうちば、一目惚れのような感情を抱いた。
 その感情のあまりつい……。

「その車、うちの物にしてください!」

「お前、免許を持っているのか?」

「免許を持っています!
 実ばレースゲームの影響でクルマの運手に憧れたこつと、万が一のこつに備えるために自動車免許を持っとります!
 なので、このエクリプスをうちのクルマにしてください!」

「この車はオーナーがいません。
 あなたのクルマにしても構いませんよ」

「だんだんです!」

 こうして、エクリプスはうちのクルマとなった。
 うちばこのエクリプスと共に、様々な出会いや冒険と遭遇するこつと

ACT.2「熊本散策」

 エクリプスを手に入れたうちはその車と共にドライブを楽しんでいた。

 運転しながら、窓から地震で変わり果てた風景を眺める。

「うちの知っている熊本ではなか……」

 言葉はこれ以上でなかった……。
 道路は崩れ、道路の断層が階段のようになっている道路がいっぱいであり、地獄へ行きそうな穴の開いた道も見かけた。

 悲惨な風景を目にしながら車を走らせていく。


 阿蘇神社へ着く。
 それを見たうちは衝撃的だった。

 綺麗に立つ阿蘇神社は地震の揺れに倒され、本殿は屋根まで崩れてしまった。
 これを見ると、言葉が出ず口が開くだけだった。

 阿蘇神社と言えば、阿蘇の火振り神事の季節になると必ずここへ家族と共に来ていた。
 その神事は幻想的で綺麗な風景が目に残っとる。

 こんなに崩れるとは想像できんばい。

 完全に修復できるのは6年掛かると言われている。
 


 AsoからKumamoto市街を長時間走り、今度は熊本城に着いた。

 ここに車を止めて城へ近づくと、武者返しと呼ばれる石垣と櫓が崩れている姿と剥がれた屋根瓦の風景が目に入った。

「あの清正公の城が地震にやられた……」

 熊本城の強さは「清正公に勝てなかった」と西郷どんから称されたほどだったのに……。
 まるで、敵軍に攻め落とされた城みたいだった。

 多くの施設が被害を受けたこの城を修復できるのは20年掛かると言われ、とても時間が掛かるようだ。



 AsoからKumamotoまで来ると、ガソリンを沢山消費してしまった。
 
 ガソリンスタンドに向かおうと長蛇の列が出来ていた。
 その列を1台のテレビ中継車が横入りしてガソリンスタンドに入り、給油を始めた。

「後ろの人もいるのに……」
 
 中継車の行動に不快感を感じたうちは車から出て、ガソリンスタンドへ向かう。

「うち、参上!」
  
 ガソリンスタンドへ着くと決めポーズを決めてから、

「あのお、すみません。
 沢山並んでいるのに割り込むのは良くないと思います!」

「うるさいなあ。
 取材するためにガソリンがいるんだよ!」

「テレビ局だから、許されると考えているんですかあ?」

 そうスタッフに反発していったものの、テレビ局の中継車はガソリンを入れるとすぐ去っていった。
 なんで何も聞かんと逃げた⁉

 数十分が経過するとうちのガソリンを入れる番がやってきたばってん、あの中継車は人々の迷惑を掛けたとうちは考える。
 許しておけんばい。


 中継車の後ろを走るエアロパーツを付けた白いSF5型フォレスターが走る。
 運転手の男は笑みをそっと顔に出しながら、

「あの娘、面白いねえ」

 と呟いた。


 エクリプスにガソリンを入れると、今度はオケラ山のミルクロードでドライブを楽しんでいた。
 後ろからエンジン音が聞こえてきた。

「ん?
 何か来る?」

 音の種類はボクサーエンジン、車体はエクリプスより大きかった。

 うちは逃げようとアクセルを強くふかせるばってん、後ろのクルマもうちに負けんように強く走る。

 バックミラーを見て車種を確認すると……

「フォレスターか!」

 あれはテレビ中継車の近くにいたクルマだ!
 
 うちを追いかけるべく、フォレスターのドライバーはアクセルを強く踏む!
 スーパーチャージャーが搭載されてツインチャージャー化した4G63ターボが吠え出す!

「ふふ、面白いねぇ。
 このガソリンスタンドにいたエクリプスの少女がテレビ局に文句を言うとは
 この際のお返しと行こうか」

 
 このフォレスターからの逃走劇はバトルへ発展するのだった。

ACT.3「加藤虎美」

加藤虎美(D27A)
VS
大竹(SF5)

コース:オケラ山ミルクロード往路


 先行するうちのエクリプス
 後を追うフォレスター
 その2台が本気で走り出すとバトルが開始する。
 
 最初のヘアピン、2連続ヘアピンが2台に襲いかかってきた。
 
 1つ目のヘアピン、ここは左たい。
 フォレスターに煽られて心臓を危機感でやられそうなうちはここを黄色いタイツで纏った脚でブレーキを強く踏みミッションのギアを下げて減速させながら、ステアリングを左に切って通過する。

 ヘアピンを攻めるエクリプスは左タイヤをキーキー鳴らしている。

 ここを抜けるとフォレスターとの距離を離したように見えた。

 ばってん、コーナーを抜けてバックミラーを見るとフォレスターの白い影は大きくなる。

「速か。
 相手のほうが立ち上がりが上か……」

「君のコーナリング、俺を離せるなんて面白いね。
 けど、立ち上がり加速は面白くない!」

 相手のほうがパワーが上だと分かった。
 コーナーで離した距離を縮め、再び煽りだす。

 うちのエクリプスは4G63ターボにスーパーチャージャーを加えてツインチャージャー化させ、ターボとスーパーチャージャーの長所をいい所取りしてかなりのパワーを得ている。
 ばってん、それでも相手には敵わない。

 フォレスターに煽られながら、またコーナーが迫る。
 今度は右ばい。
 
 さっきのように、ブレーキを強く踏むと同時にギアを下げて減速させながら、ステアリングを右に切りながら攻めていく。

 このコーナーでもフォレスターを再び離したように見えたばってん、パワーで負けているからまた煽られ、しかもテール・トゥ・ノーズの距離だ。
 スーパーチャージャーのコンプレッサーとターボのサウンドを響かせながら、フォレスターから逃げようとしたばってん、距離は縮められない。

 接触寸前に煽り続けるフォレスターは右へ車線変更して、ついにうちを抜きにかかろうとした。
 ばってん、うちも右へ車線変更して追い抜きを防いだ。
 
 追い抜きを防がれたフォレスターはスピードを一瞬だけ落とすのだった。
 
 直線が終わり、S字2連ヘアピンが迫る。
 1つ目が右、2つ目が左たい。
 ここに入ると上りだったのが下りへ変身した。
 
 ここはブレーキを踏まず、アクセル全開で抜けていった。
 2つ目の部分は黄色い左脚でブレーキを弱く踏み、右脚でアクセルを強く踏み、加速を優先しながら最短ライン近くのガードレールへの接触という恐怖と友達になりながら抜けていく。
 
 うちはクルマの運転について素人で、速く走る運転にはとても恐怖心があり、いつ事故が起きるか心配してしまう。
 ばってん、後ろからの逃げるためにはそんな気持ちを捨てる暇はなか。
 2つ目のコーナリングは逃げるためにやった行為たい、逃げるは恥だが役に立つ!

 後ろを走るフォレスターもS字2連ヘアピンに入った。
 接触への恐怖を感じているのか、1つ目も2つ目も減速しながら攻めていき、うちより速度域がなかった。
 そのこともあり、うちとの差が広がっていく。

 ここからは直線だけど、フォレスターはS字2連ヘアピンで減速して大きく距離を離されたこともあってあまり距離を縮めることが出来なかった。

 緩く曲がる高速左コーナ―に入る。
 ここはブレーキを踏まず、黄色い脚でアクセル全開のまま抜けていく。
 一方のフォレスターはここで緩く減速して差はさらに広げていった。

「面白くない!
 面白くない!」

 うちに離されて、とってもイラついているようだ。

 ここからしばらく直線がやってくる。
 遠くから小さく見えるフォレスターはツインチャージャーのエクリプス以上のパワーで距離を縮めようとしてきたばってん、それでも距離を縮めることができんかった。


 長かった直線が終わり、コーナーに入る。
 しかも3つある。
 最初は左たい。

 ここから下りから上りへ再び変身を遂げる。

「ここまで離したばい……
 これぐらい離したら、あれを披露してやるたい!」

 うちは留めをさそうと、黄色い左脚で強くブレーキペダルを踏み同時に右手でサイドブレーキを引かせ、左手でハンドルを強く曲げてエクリプスを横に向け、その態勢のまま今度は右へ曲げる。

 ドリフトたい。

 右にタイヤを向けながらドリフトするエクリプスはリヤタイヤから白煙を吐きながら道路を登っていく。

「出来た……」

 この技はレースゲームでしかやったことがなく、これまではレンタカーでやったきたうちには考えられない技だった。
 うちも出来たなんて、考えられない。

 2つ目のコーナーに入る。
 右たい。

 今度はハンドルを逆方向に回し、クルマの方向を逆に変えて攻めていく。
 左コーナーを出たエクリプスはタイヤを左に向けながら、右コーナーをドリフトで攻めていく。

 フェイントモーションたい。
 こんな技も使ってしまうなんて想像できんばい。

 うちって本当に初心者なんかっていう感覚さえ忘れてしまう。


 3つ目のコーナーに入る。
 ここは再び左たい。
 ここの上り坂はさらに急な斜面となっている。 

 この時、ある物がエクリプスのドリフトにスピードを与える――!

「<コンパクト・メテオ>!」

 それを言うと、車に神秘が溢れる透明のオーラに包まれ、速度が向上していく。
 まるで別世界にいるような気分だった。
 瞬きの出来ないような急加速をしながらのドリフトでコーナーを突き抜けていく。

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎、虎ー!」

 あまりにも速さで攻めるエクリプスのハンドルを曲げていくうちはこんなことを叫んでしまった。
 
 すごか、すごか、本当にすごか!
 まるでビデオの早送りのようだった。
 
 こんな現象見たことなか!

 オーラから貰った急加速はコーナーを抜けると同時に無くなっていた。

 コーナーを抜けてバックミラーを見ると、後ろのフォレスターの姿は無かった。

「ふう、逃げ切ったばい」

 急加速現象を使ったおかげだろうか……。
 あの現象に感謝したか。

 その後、フォレスターはうちの姿を見失った。

 バックミラーからフォレスターを消した後も、そのまま走り続けるのだった。


 フォレスターから逃げ切ると、西湯浦牧場へ到着する。
 ここで1匹の牛を眺めていた。

 そんなうちの近くに牧場の人が来る。

「この牛、地震が起きる直前にはすごか暴れておったばい。
 今まで見たことがないほどだったたい」

「へぇ、そうなんですか」

 地震前にこんな現象が出るというのはよく聞く。
 
 クジラやイルカが打ち上げられるというニュースが起きると、「これは地震の前兆か?」と言われる。
 うちも地震が起きる前、犬や猫が凄い鳴き声を出す姿を何度も聞いてきたばい。

 牛を眺め終えると、エクリプスの運転席へ乗り込んだ。
 エクリプスのハンドルに黄色いタイツで包み込んだ綺麗な脚を置く。

 黄色い足を眺めながら、こんなことを考えたばい。

「さっきのこと、心拍数が爆発的に上昇したばい。
 こんなの初めて……」

 なんかフォレスターに追われて走りへの情熱を感じてしまったばい。
 こんなに嫌だった出来事がそんなに身体中を自然発火寸前に熱くするなんて、考えられなかった。

 これを機に
 もっと走りたい
 速い奴と走りたい
 速い車を追いかけたい
 
 そんな考えがうちに過る。


 被災したうちの公道での復興物語はここから始まるのだった。

 そして3連続コーナーで発生した、“超加速現象”について気になった。
 うちはその現象のことは分からなか。
 
 ばってん、この現象は後にうちら走り屋たちと深く関わっていく物になるのだろう――。


 一方、虎美を見逃したフォレスター乗りは……。

「あのエクリプスを取り逃すとは面白くないねえ!
 今度会ったらまた追いかけてやろうか!」

 フォレスターのオーラから紫と金のオーラが出る!

 このオーラは沙羅子と同じ物から作られたオーラだった。

ACT.4「覚醒技」

数々の場所をドライブしていたうちとエクリプスはサラマンダー丸に戻る。

 エクリプスのドアを翼のように開かせて、運転席から降りた。
 
 実はこのエクリプス、ガルウイングドアという特殊な開き方をするクルマとなていいる。。 
 ちなみに通常のエクリプスは横に開くばってん、このクルマを当時新車で購入した最初のオーナーがオプションで付けたクルマだ。

 普通のクルマと違う開き方をするから乗り降りが怖かったばってん、今は未来的でカッコイイと感じ、慣れている。

 クルマから降りると、代表本部テントに入る。
 そこにいる沙羅さんに話しかけた

「ただいまです。
 沙羅さん、ドライブから戻ってきました」

「おかえりなさい、虎美。
 ドライブは楽しかったのですか?」

「はい。
 どんなドライブだったのか話しますね」

 今日の出来事を話すと、場の雰囲気が重くなる。

「阿蘇神社や熊本城、オケラ山ミルクロードへ行ってきました。
 ミルクロードでは白いフォレスターがうちとエクリプスを追いかけてきたんですけど……」

「白いフォレスターですか……。
 あれは某テレビ局の取材班、大竹が運転している車ですね。
 あなたを追いかけるとは恐ろしいことをしてくれていますわ」

 沙羅さんはあの白いフォレスターのことを知っていたのか。
 名前も分かりましたよ、沙羅さん

 白いフォレスターから逃げ切った後に起きた現象について話す。

「ばってん、無事に逃げることができましたけど。
 逃げ切った後に透明のオーラを纏うと速くなったんですけど、それは何でしょうか?
 なんかあ、<コンパクト・メテオ>と叫んだら速いスピードでドリフトしましたけど·······」

 あの出来事は今でも何なのか疑問に思っている。
 どうして速くなるのだろうか?

 このことについて、沙羅さんが口を開いた。

「この現象は覚醒技(テイク)と呼ばれるものです。
「越えていく者」という意味の「テイク・ミー・ハイヤー」から覚醒技(テイク)と呼ばれております。
 覚醒のオーラを纏うことでテクニックを越えた走りをすることができ、精神の強い走り屋はこれを使用することができます」

「覚醒技というもんなんですか……」

「そうです。
 彼らは覚醒技超人(テイク・ハイヤー)と言われ、普通の走り屋との見分け方はオーラがあるかないかです。
 オーラの色は属性を表しており、属性の相性がいいと技の威力と速度が上がります。
 それぞれの覚醒技には能力を持ち、これらは特権と言えるものばかりです。
 ちなみに、あなたが使った<コンパクト・メテオ>は覚醒技の初歩的な技であり、一定の精神力があれば一般人でも使用可能です」

 なるほどなるほど、これで分かったばい。

「簡単に言えば、走り屋のための超能力なんですね
 現象がなんなのか分かりました」

 疑問が消えて、頭が軽くなった。

「いえいえ、覚醒技のことで分からないことがあればまた聞いてくださいね。
 いつでも教えてあげますから」

 これで現象の話を終わりだ。

 あと、沙羅さんにこんなこと頼んだ。
 取材から助けてくれたお礼と、2度とマスコミに嫌がらせされないためだ。

「沙羅さん、うちをこのテントの住民にしてください。
 家を再び持つまでの間でも構いませんし、どんなに辛くても財団に手を貸すこともします。
 どうか、お願いします」

「あなたの頼み、後で嫌と言われても受け入れます」

「だんだんです!」

 こうして、うちはここの住民となった。


 あれから、1週間が経過して4月30日となった。

 とある体育館にて、テレビ局の中継車と大竹の物と思われるフォレスターの姿がある。

 大竹と他の取材スタッフが会話をしていた。

「先週、ガソリンスタンドとミルクロードで黒い三菱のスポーツカーを見かけた。
 ガソリンスタンドで文句を言われたことと取材できない腹いせのあまり、ミルクロードであのクルマを目撃すると勝ったら取材してやろうと追いかけた」

「どうしたの?」

「離された。
 直線では勝てたけど、コーナーでは負けまくった。
 まったく面白くない、取材するまで帰れないぞ」
 
「三菱のスポーツカーの車種は?」

「エクリプス、初代ことD27A型のエクリプスだ」

 その後、大竹の身体から金のように輝く金色のオーラとヘドロのような紫のオーラを出す。

「待ってろよ、エクリプス……!
 取材できなかったら……全く面白くない!
 勝って取材してやる……!」

 オーラに包まれながら、そうリベンジを誓っていく。

 虎美はまだ知らない。
 あのオーラが覚醒技の物だとは……。


 午前9時、震災で被災したことで一部の道路が被災した箱石峠。

 ちなみにこの時間になるといつもなら高校にいる時間ばってん震災の影響で現在休校中だ。

 道路の修復には建設事業の会社だけでなく、サラマンダー財団も参加し、現在休校中のうちも関わっている。
 サラマンダー財団の協力者となったうちは箱石峠で何しているかって言うと……エクリプスで走行しながら修復した道路の確認しているたい。
 
 エクリプスの前には同じく道路の確認をする沙羅さんのエボファイナルが走行しているばってん、速すぎるたい!

 速すぎて、見えなくなるばい!

「この速度でも、道路の状態が分かりますわ」

 まぁ、うちに比べると走りの経験がある人だし……沙羅さんのエボファイナルはうちのエクリプスより遥に性能が高かだからな。 



 うちのエクリプスと沙羅さんのエボファイナルはゴール地点へ到着した。

 ここには沙羅さんとエボファイナルと同じ形をしたクルマが2台停車している。
 ばってん、色はそれぞれ青と黄緑と異なるばい。
 
 それらのクルマはランサーエボリューションXと言われ、エボファイナルのベースとなったクルマだ。
 
 そこには副代表で沙羅さんの側近こと毒蝮奈亜河さんと、同じく副代表で沙羅さんの側近である石守要 (いしもり・かなめ)さんが立っていた。

 うちと沙羅さんはそれぞれのクルマから降りて、2人の副代表に道路の状況を報告する。

「道路の状況は悪くありませんでしたよ」

「うちも悪くなかったです」

「なら、次は覚醒技で道路の耐久実験お願いします」

 次の仕事に移り、うちらは再びそれぞれのクルマへ乗り込む。
 エクリプスのコクピットのシートに触れた瞬間、なんか嫌な予感が感じた。

「邪魔者が現れそうたい」

 その的中する瞬間がすぐにやってきた。

 夢高原キャンプ場と結ぶ北の道から、1台の白いフォレスターが来る。
 ドアからドライバーが降り、2人の副代表に尋ねてきた。

「すまないけど、黒いエクリプスの少女って知っているか?」

「今は道路の耐久試験中だ」

「あそこのいるじゃないか!」

 あの男は……先週うちを追いかけた大竹だった。
 大竹、なぜここに来たたい!

「よくも何度も取材から降りきるとは、お前面白いねぇ」

「あんた、大竹かあ?
 沙羅さんから聞いたばい!」

「俺の名前を覚えてくれるとは、面白いねえ」

 乱入してきた大竹はさらにこんな事を持ち掛けてきた。

「道路の耐久実験なら、俺と一緒なら出来るだろう。
 俺と勝負して、負けたら強制的に取材を受けてもらおうか
 拒否しても強制的に取材を受けてもらうよ」

 先週の件でのリベンジか……!
 被災した人をそっとして欲しいのに、取材するために何度も追いかけるなんてしつこいぶぁい!
 あと、大竹の背中から炎と毒ガスのような物が吹き出る。

「前に俺は負けたけど、今度はこの力でお前をぶっ潰してやろうか」

「お、オーラ!?
 お前は覚醒技超人か?」

 奈亜河さんは背中から出るお金の嵐と毒ガスのような物を見抜く。

 オーラは覚醒技超人の証だ。
 
 覚醒技超人であると判明した大竹に挑まれるうちに対して沙羅さんはこんな忠告を言う。

「虎美、今度の戦いでは覚醒技の技を使ってきます。
 あなたも覚醒技で挑むべきですが、属性の相性が悪すぎます。
 相手の属性は金·毒属性、あなたの属性は木·土属性です」

 もう一回言うばってん、属性の相性が良いとクルマの性能と相手に与える精神ダメージが大きくなる。
 属性はオーラの色で分かり、木・土属性だとオーラの色は「緑・オレンジ」だ。
 属性の相性の悪さから、苦戦を予想された。

 ばってん、うちの決心は固かった。

「ばってん、うちは戦います!
 取材されないために」

 あの取材は嫌らしいものになると予想したうちは大竹の挑戦を受けることにした。

 苦戦を予想した沙羅さんは、うちがクルマ初心者であることと覚醒技初心者ということもあってある手助けを考える。

「私はエクリプスの助手席でアドバイスしますわ。
 私のアドバイスを聞いて攻めてください」

「代表!」

「私は、虎美を勝たせますから」

 ラリーでいうコドライバーという役割するらしい。
 初心者だから助かるたい!

「代表もコドライバーとして戦うのかい。
 面白くなったね。
 じゃあバトルを始めようか」

 それぞれのクルマに乗り込み、眠るクルマを起こす。
 うちのエクリプスの助手席に沙羅さんが乗り込む。

 スターターは副代表の片割れこと、要さんが務める。

 エクリプスに乗り込んだうちは、助手席の沙羅さんにこんな疑問をぶつける。
 覚醒技の使い方についてだ。

「ところで、覚醒技はどう使うんですか?」

「使ったことがあるのに分からないのですか!?
 覚醒技はもう1台のクルマを運転している感じで使用したほうがいいと思いますよ。
 そうすれば、綺麗に技を放てます」

「はいはい、そうですか」
 
 そのアドバイス覚えておきますよ、沙羅さん

ACT.5「清正の片鎌槍」

 加藤虎美(D27A)
 vs
 大竹(SF5)

コース:箱石峠復路


 獣の如く咆哮を上げ、2台はスタートを待つ。

「カウント、行きまーす!」

 出発を待つ2台の前に奈亜河さんと要さんが立ち、彼女たちは腕を大きく上げる。
 
 カウントが始まる瞬間、2台の鳴き声は大きくなっていく。

 2人の指が数字と共に折られていく。

「5,4,3,2,1,GO!!」

 カウントが終わると、2台はスタート地点をダッシュしていく。

 やはり前を出たんは大竹のフォレスターで、エクリプスのツインチャージャーを越える高いパワーで先攻したようだ。
 
「ついてこいよ、先週の仕返しをしてやるからな」

 フォレスターを前にした2台はスタートしてすぐの緩い右コーナーに入る。
 ここをうちはハンドルを小刻みに切りながら抜けていく。
 
 コーナリングするエクリプスを動かしながら、助手席でナビを努める沙羅さんからアドバイスを貰った。

「しばらくは前に出なくても構いません。
 前に出てしまうとプレッシャーが大きくなりますし、後ろだと相手の様子を伺うことができますからね」

「なるほど、しばらくは様子見にします」

 後攻のほうが有利か、分かったばい。

 緩いコーナーを終えてすぐ、低速ヘアピンがやってくる。
 右だ。

 ここを前のフォレスターはゆっくりなグリップ走行で抜けていく。
 
 後攻するうちはブレーキを踏むと同時にサイドブレーキを引き、ハンドルを一瞬だけ右に切るとすぐ左に変えてドリフトを発生させる。
 派手に攻めるエクリプスはフォレスターのケツに近づく。

「やるね、面白いね」

 距離を縮めたエクリプスを見て、敵でありながらこう賞賛した。

 続く90度の左コーナー、ここはさっきと同じやり方で2台は攻めていく。
 
 またフォレスターとの距離が縮まった。


「面白い、面白いね~!
 けど、面白くなるのはここからだよ」

 大竹の表情、口に笑みを浮かべている。
 まさかあれを使うんか? 
 
 沙羅さんは助手席から大竹のクルマを見て、殺気を感じた。

「次で来るかもしれません、虎美」

「いよいよですか~?」

「私にはそう感じております」

 その殺気は次の突き当たりの右低速コーナーで起きる。

 前を走るフォレスターはゴージャスに輝く金色のオーラをボディに纏いながらここに入り、

「今から使うか。
 <ゴールド・ラッシュ>」

 今までより速かな速度で駆け抜け、うちのエクリプスの眼から小さくなっていく。
 その速度はうちのドリフト走行でも追いつけんかった。

「やっぱり来ましたね」

 さらに、相手の技の影響で……うちの精神にこんなことが起きる。

「うわ!
 痛たたたた………これが覚醒技の能力たい?
 苦しい……へぇへぇ」

 まるで殴られたような気分になったばい。
 一気に疲労が溜まった感じ巣がするばい……。
 な、何をするだーッ!
 許さんッ!

「技を受けると精神的なダメージを受け、運転に支障がでます」

 あぁなるほど……覚醒技超人の技は精神を傷つける能力があるのか。
 分かったばい、分かったばい。
 
 沙羅さんはさらに続く。

「あなたの精神ダメージ、結構大きかったです。
 バトル前に話しておりましたが、あなたの覚醒技は金属性がとても苦手としているため大ダメージを受けました。
 あとあなたの覚醒技は金属性がかなり苦手だったため、相手との距離はとても遠くなりました」

 バトル前の悪かな予感を当てたようだ。

 やっぱ属性の違いは痛かったか。

 どうすれば不利な属性を覆すことができるんだろうか?
 うちの能力がそれだったらな……。


 精神力の減少はうちの走りに大きく与えた。

 左ヘアピン、右からのS字ヘアピンといったコーナーが迫り来る。
 これらの場所で行ったコーナリングでは、技のダメージによる精神力のムラからさっきまでのキレが失われていた。

 精神力が減ったため遠くにいるフォレスターとの距離は縮められない。

「どうしたらいいんですか、沙羅さん?」

「こっちも、技を使うべきです。
 ただし初歩的ではない技を使いましょう」

「初歩的ではない技ってどんな技でしょうか、あとうちもそれを持っているんでしょうか?」

「覚醒技超人のみが使える技で、精神をかなり集中させて使うのです。
 覚醒技を持っているあなたも使えるかもしれません」

 分かりましたよ、沙羅さん。
 
 このヒントを頂いたうちは自分の心に精神力を集中させ、オーラを発生させていく!

 右低速ヘアピン、ここにてオーラを纏ったうちは技を発動させた。
 オーラの色は疾風のような萌葱色へ変化する!
 
「加速して、もっと一発のコーナリングを……!
 肥後虎ノ矛流<真空裂速>!」

 その時コーナリングの速度が一瞬だけ高くなり、その速度は<コンパクト·メテオ>を上回る。
  
「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ああああああああああああああー‼」

 異次元の加速でコーナリングするエクリプスは恐ろしい速度でコーナーを駆け抜ける。

 そこを抜ける後はなぜかオーラの色が緑·オレンジから萌葱色となっていることに疑問を感じた。

「技を使ったのか、色が変わっているばい……属性が変わったんかな?」

「その現象ってあなたが持つ覚醒技の能力ですよね……?」
「そ、そうなんですか……これがうちの能力ですか」

 うちも能力を持っていたんか。

「そうです、あなたの能力は「使った技と同じ属性に変化させる」という能力ですね」

「これなら……不利な弱点を覆せますね!」

 前に悪い「うちの能力がそれだったら」って考えたばってん、うちがそんな能力を持っていたとは。
 やったーやったーやったーばい!

「変化した風属性は毒属性と金属性に有利で、大竹と属性の相性で逆転しましたね」

 さらに嬉しい情報を貰った。
 これで、うちは有利たい。

 待ってろ大竹ェ、属性の変化したうちの走ろを見ろ!

 <真空烈速>による高速走行を行ったことによって、大竹のフォレスターの姿が見えてきた。 

 遥か前にいる大竹は勝ち誇っていたばってん……。

「後ろにエクリプスが見えない……もしかして俺の勝ちかな?
 覚醒技を使ったら勝っちゃったよ、面白くないねー!」 

 ミラーで後ろを見ると電撃を喰らったような衝撃が走る。

「な……何、追いついて来ている!?」

「うちも技を使ったたい、うちの前を走らせなか!」

 大竹を追いかけるべく黄色い右足で精一杯アクセルペダルを潰すように踏み、握力の限界を超えるようにハンドルを握った。

 コーナーの後は直線と右からの高速S字コーナーだったけんフォレスターにちょっと離されたばってん、それらを抜けると右ヘアピンが見えてくる。
 ここにてドリフトからのコーナリングでフォレスターを追い詰めていく。

「さっきまで追い詰めていたのに……」

 逆に追い詰められたな、大竹え!

 大竹を右ヘアピンで追い詰めると、左ヘアピンに入る。
 このヘアピンから2連続ヘアピンだ。
 
「えぇいこれでも喰らえ、<アタック・ポイズン>!」

 毒素全開の紫色のオーラを包み、高速でコーナーを攻めながらうちから逃げようとした。

「これなら、倒せる!」

 大竹は今のうちの属性について毒に有利な土・草属性だと考えていた。
 
 しかしうちのオーラの色は変わっていため、満足な攻撃が出来なかった。

「甘かったな大竹、今のうちの属性は風たい!
 色を見てみ!」

 毒属性の技は風属性の覚醒技超人にあまりダメージを与えられず、距離を離せることが出来なかった。
 
 逆転していくうちはフォレスターの首級を凄まじい眼で狙っていた。
 大竹を討ち取りたいあまり、こんなことを沙羅さんに相談する。

「沙羅さん、ついにやってもいいですよね?」

「あなたの好きなようにどうぞ」

 コースは半分を切り、いよいよフォレスターの前に出てもいい頃だ。

 萌葱色のオーラを鉄のような銀色に変色させていき、うちの眼光が“虎”美という名前の通り「虎」らしくフォレスターを狙っていく。

「行くばああああああああああああああああああい!
 必殺、<清正公の片鎌槍>!」

 速度を高め、鎌を振り回すようなコーナリングをしながらエクリプスはインからフォレスターに襲いかかるのだった。
 フォレスターを狙うエクリプスのハンドルをうちは必死に左へ旋回させていき、黄色いタイツに包まれた右足はアクセルを踏んでいく。

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎、虎ー!」

 フォレスターを鎌で斬るように攻めていくエクリプスは超高速スピードで先頭に立ち、エクリプスの鎌に斬られたフォレスターは抜かれて失速、さらには……。

「ぐは、ぐはあああああああ
 俺が負けるとは……面白くないねー!」

 まるで斬られたようなダメージを受けながらさらにスピードダウンしていき、さらにクルマは技を喰らった影響でフラフラしながらスピンした挙げ句ガードレールを擦りながら停車してしまった。

「被災者を虐めた罰が当たりましたね。」

「ざまぁ見ろ大竹、けど大竹がスピンさせたのはうちじゃなか――大竹が虐めた被災者の姿を天から眺めた清正公の裁きたい」

 そんなフォレスターのことを無視しながら、うちは走り続けた。


勝者:加藤虎美



 大竹を仕留めたうちは沙羅さんとエクリプスと共にスタート地点へ戻って来る。
 ガルウイングから出ると、副代表2人が迎えてくれた。

「ただいまです、うちらは勝ってきました。 
 沙羅さんがいなかったら、負けていました」

「おかえり、勝利おめでとう。
 無事に勝てて良かったぞ」

「ただいま、虎美は無事に勝てましたよ」

「おかえり、代表。
 虎美は勝てたのですね」
 
 しばらくするとフォレスターが来る。
 そのクルマの姿はスピンしたためか、バンパーが凹んで傷だらけとなっていた。

「俺に勝ってしまうとは、面白いね」

「お前には祝ってほしくなか」

 あいつは被災者を虐めた悪魔だ。
 マスコミなんて信用できなか。

「クルマのバンパーを傷つけるなんて、クルマが泣いとる」

「お前が傷つけたんでしょーが」

「傷つけたのはうちではなか、被災者を虐めたお前が悪か」

「人のせいにしやがって……」

「そうだ虎美の言う通りであり、被災者を傷つける取材をしなかったらお前のクルマは傷がつかなかったかもしれない。
 全ての被災者に反省しろ」

 奈亜河さんもうちの説教に加勢する。
 うちも反省して欲しいと考えとる。

 さらには、こんなとどめの一言をぶつける。

「あんたたち悪質なマスコミは被災地に入れる出入口はなか、被災者はあんたらの見世物ではなか。
 もう分かっただろう、さっさと出ていけ」

 強く言った一言で大竹に大きくダメージを与え、傷だらけのフォレスターに乗り込んで退散していった。

 その姿は反省の様子は無く、うちにビビッて逃げていっただけだった。

「追い出すことは出来ましたけど、反省してほしかったですね」

「いいんです。
 マスコミは反省させることは宝くじ並みに難しいのですから」

「あいつを追い出しただけ一件落着だ、後は二度とここへ現れないことを願うしかない」
 あのような悪質マスコミが二度と被災地に現れないことを願う。
 
 大竹、二度と出てくるな。

 大竹のような汚い奴がここに来ないことを願う。

ACT.6「マスコミが放った罠」


 箱石峠で大竹を退散させると、うちらはサラマンダー丸に戻り、その中にある食堂で沙羅さんと副代表2人と談笑をしながら晩御飯を食べていた。

 ちなみにうちらが食べているのは馬刺し料理であり、これは熊本の郷土料理たい。
 熊本は日本一の馬肉の土地であり、馬肉は桜肉とも言う。

「あなたが震災後に覚醒技をどうやって手に入れたのかこの前に調べました……実は震災数時間前にロジャース彗星の隕石が阿蘇山へ落下したようです」

「うちが震災後に覚醒技という現象を手に入れたんは、それなんでしょうか?」

「そうですわ。
 落下した後はオーラがAso全体に発生し、強い精神力を持った人は覚醒技超人となりました」

 それってもしかして……。

「うちの同級生の中にも覚醒技超人になっとる人もいるんですよね……?
 今は震災の影響で高校が休校しておるんでうけど」

「そうかもしれませんね……あなたの友達の中に覚醒技を持っている人はいるかもしれません」

 うちの友達こと飯田ちゃんとひさちゃんもその隕石によって覚醒技を持ったんかもしれんたい――。
 友達がそんな現象を持っとったら自慢できんばい!

 この話は止めて、次はマスコミのことを批判的に語り合う。 

「あとマスコミはどうして取材の仕方が人道的ではなかなんでしょうね。
 テレビで放送しているから、自分がやっていることを[[rb:正しい」 > スタンダード]]だと考えとるからこんなことをしているかもしれませんね」

 これに副代表2人組が答えた。

「そうかもしれないな。
 テレビの記事を取ることが仕事であり、そのためには手段を選ばず、人の痛みですら感じないのだ」

「マスコミは他人の事を尊重をして報道するべきであり、どんなに弱い者でもそっとしておく必要があります
 私たちはそれを守りながら生きております」

「親からこんなことを言われことがあります、「他人のことを考え、良いところを見つけるべき」と。
 うちもそう考えております。
 マスコミは弱い者いじめをしていることに気付いてほしかで、弱い者いじめなんてやめるべきです。
 うちだって、いじめられた友達を助けたことがありますけんね」

 この言葉はマスコミに言わせたい言葉だ。
 マスコミ、聞いとるだろうか?

 まぁ、聞いてなかかもしれんな。

 とある体育館にて、被災した人たちに向けて沙羅さんがコンサートを行うらしく、夜7時から準備が進められた。
 うちも準備を行い、コンサートに使う楽器を運んだ。

 9時になると、コンサートが始められる。
 沙羅さんの心地よい歌声が館内に響き渡る。

 被災して傷付いた人たちの心が癒されていく。
 それを聞くと、震災のような辛い出来事があっても気持ち良く生きることができるだろう。

 コンサートの後、同席した人たちに話しかけていった。

「実はうち、君たちの邪魔をする悪いやつを倒したんばい」

「あ、そう」

 マスコミを追い出した英雄を知らんとはどういことたい!

 けど、マスコミを追い出して一安心ばい。 
 嫌なやつがここに来たら、うちがやっつけるけんな。

精神アースクェイク虎 第1章、完

 5月10日、震災の影響で休校していた学校たちは授業を再開していく。
 うちの通っとる麻生北高校もその1つだ。

 うちは赤帯のセーラーと黒タイツを久々に着用してエクリプスと共に学校へ向かう。
 ちなみに、うちのエクリプスは学校へ行くのが初めてだそうだ。

 学校の駐車場着くとエクリプスを停車させ、ガルウイングから荷物と共に降りていく。

「うち、学校に久しぶりに見参」

 久々だから、カッコつけたばい。

 エクリプスの隣にワインのようなカラーリングをした流麗なクーペ、スバル·アルシオーネSVXが停車していたばい。
 このSVXはWRCを彷彿させる本棚のようなウイングをはじめとするエアロパーツで武装し、ボンネットはカーボン素材に交換され、サイドには白いフレイムバイナルが貼られている。

 アルシオーネSVXという車はスバルが発売したグランツーリスモであり、アルシオーネとしては2代目に当たるクルマだ。
 流麗なデザインは世界的に有名な「イタルデザイン・ジウジアーロ」がデザインし、エンジンはEG33型水平対向6気筒エンジンを搭載している。
 SVXは「スバル・バリュー・X」の略だ。

 SVXの運転席から誰かが降りる。 
 降りた人の容姿はピンクのツインテールに同色の瞳を持つ釣り目で、体型は中学生と思わせるほど小柄だ。
 この学校の制服を着ていて、うち同様に黒いタイツも履いている。

 うちの知っとる奴ばい。

「久しぶりね、虎美」

「久しぶりたい、飯田ちゃん!」

 彼女の名前は飯田覚(いいだ・さとり)うちの友達ばい。
 うちは「飯田ちゃん」と呼んでいる。

「あとSVXというクルマを買ったんたい、良く珍しかな見つけたな」

 ちなみにSVXというクルマはあまり売れなかったらしく、見ることはほとんどない車だ。

「こちらこそ、ガルウイングの初代エクリプスとは良く見つけたわね。
 どこで見つけたの?」

「買ったのではなく、貰ったばい」

「どこで貰ったの?」

 その時、うちは道路に立っていた。

「それは……」

「虎美、後ろからクルマが来るわ!」

 そこに立っていたため車に跳ねられそうになったばってん、飯田ちゃんの声で助かった。
 跳ねられそうになったため、うちはタイツ越しにパンツが見えるほど腰を下してしまったばってん、うちを轢きそうになったことでドライバーもうちよりビビっていた。

 そのドライバーはここの制服とニーソックスを着用した小柄な茶髪ポニーテールの女の子、うちの友達“ひさちゃん”こと森本ひさ子(もりもと・-こ)だった。

「うわ……虎ちゃんごめん!
 わしゃ、また迷惑をかけた――」

「よかよか……」

「遅かったわね、ひさ子
 何があったの?」

「わしのファミリアが道の溝に脱輪しとって……レッカーで助けて貰っとったら遅れたたい……。
 他にも、クルマのフロントガラスに風で飛んできた看板が直撃して前が見えんようになっとたり……」

「ひさちゃん、BG8Zファミリア買ったんかい。
 しかもホットモデルのGT-Rたい!」

 ひさちゃんの愛車、ファミリアGT-Rは7代目BG型ファミリアハッチバックをベースとした4WDのホットハッチだ。
 すでに存在しとったホットモデル・GT-Xをさらに進化させて210馬力を達成しとる。
 参戦資金不足からマツダはWRCを撤退してしまったばってん、プライベートレーサーによる参戦した車両が各地で表彰台を飾った。

 ひさちゃんのファミリアの色は深緑、外観は欧州車のラリーカーを思わせとるワイドボディで武装し、ホイールは走り屋の定番であるワタナベ8スポークを履いとる。

「虎美、ひさ子の車を羨ましく感じる暇はないでしょ!
 ひさ子、相変わらず運が悪いわね……
 脱輪するし、虎美を轢きそうになったし……」

「ひさちゃん……さすが運の悪さはギネス級ばい」

「虎美、それも言わないのよ!」

 やれやれ、ひさちゃんの運の悪さは久しぶりの学校でも変わっとらんな。

「あ、クルマやひさ子のことで話したら授業に遅れるわ。
 虎美、ひさ子、授業へ急ぎましょ」

 学校に到着してすぐ話をしとったら、時間が無くなったばい。
 うちらは急いでダッシュしたばってん……。

「待って~!
 虎ちゃん、飯田さん!」

 体力が極端に低いひさちゃんはうちらに置いていかれる。

 
 久しぶりに学校が始まった今日、友達も速そうなクルマを購入しとった。
 後にうちはあの子たちの秘密を知ると、彼女たちと共に最速を目指すこととなる。 

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